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敗血症

敗血症判断基準

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敗血症
敗血症定義
敗血症(上段:2016 下段以下: 2001)
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敗血症基準
重症敗血症
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クラミジア感染症(クラミジア肺炎)

 クラミジア肺炎がこのところ外来でよくみられるようになっています。臨床症状はマイコプラズマ肺炎と区別がつかないほど似かよっています。そこでクラミジアについて整理して理解を深めたいと考えます。クラミジアもマイコプラズマと同様、他の細菌が持っている細胞壁を持たないのが大きな特徴です。クラミジアは大きく4つに分類され、その中でヒトに感染して症状が出現するのは3種類です。性感染症としてのChramyidia tracomatis、主に呼吸器に感染して肺炎の原因になるChramydia pnemoniae そして飼育されているオウム・インコ・ハトなどから感染するChrmydia psittaciです(高熱・頭痛・筋肉痛・除脈等がありChr.peumoniaeにくらべてやや重症の経過)。Chr.tracomatisには15の血清型、Chr.pscittaci にもいくつかの血清型が知られていますがChr.pnemoniaeは1種類のみのです。最近の遺伝子分析からChr.pneumoniaeとChr.pscittaciはchramydophilaに分類されますが、これに関してはまだ検討の余地があります。
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(クラミジア肺炎の成立機序)
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(クラミジアの増殖)EB :基本小体 RB:網様体


 クラミジアが他の細菌と異なるのはその増殖感染の仕方にあります。ヒトの細胞に入り込む形態とその中で増殖する形態の様式が違っています。基本小体として細胞に侵入、網様体に変化して増殖、また基本小体の形で細胞外に分泌されます。細胞内でないと増殖が不能になります。したがって一般の細菌の培地では培養できません。また細菌がもつ細胞壁はありません。そのため抗生物質の選択に影響、細胞壁合成阻害を特徴とするペニシリン系・セファロスポリン系は無効になります。
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(ダイナミックメディシンより引用)

 肺炎クラミジア(chr.peumoniae)は飛沫感染により伝播、潜伏期間は21日程度で発熱・咳等が出現、咳はむせるような乾性咳嗽が特徴(肺炎になると喀痰を伴うことも)で、なかには喘鳴がみとめられ治療しない場合、長引いて慢性咳嗽の原因になります。発熱が無いケ-スも少なくなく、一般状態が著しく阻害されることはありません。肺炎の場合、胸部聴診では正常音のことから乾性ラ音・湿性ラ音が聞かれるまで様々です。レントゲン写真では間質性の変化が主ですが、肺胞性のものもみとめられます。CRPは軽度上昇、白血球軽度増多~正常、確定はPCR法による菌の証明ですが、実際の臨床の場では酵素抗体法による抗体価の測定(Chr.pneumonie IgM・IgG)が簡便なため頻用されます。ただEIAの検査には偽陽性などの問題もあり判定には注意が必要になります。IgM 単独ではインデックス2.0以上、IgGではペア血清の採血を原則とし4倍以上の上昇を診断の根拠としています。肺炎クラミジアに感染したヒトの全員が肺炎になるわけではなく約10%程度と考えられています。外来でみる肺炎ではマイコプラズマ肺炎よりやや少ない頻度ですが、医師が疑って検索しないかぎりマイコと誤診されている可能性があります。さらにかぜ症状もしくは気管支炎程度で治癒してしまうことも少なくりません。さらには症状がなく自然治癒してしまう無症候性感染も多く見られ、15歳までにほとんどが感染していて抗体を保有しているとの報告があります。クラミジア肺炎では他の細菌等と混合感染していることが特徴のひとつで、入院した約1/3の症例で肺炎球菌・インフルエンザ菌・マイコプラズマ等の感染が同時に報告されています。合併症として最近では動脈硬化との関連が注目されてきています。クラミジアは感染して抗体ができても、これらの抗体が感染防御に働くことがないため、再感染もしくは持続的に感染することが少なくありません。再感染ではIgM抗体の上昇はなく2週後よりIgG抗体が上昇(初感染時は約4週間後)してきます。
 治療はマクロライド系・ミノマイシン系・ニュ-キノロン系の抗生物質が選択されます。これらはいずれも細胞壁には作用点がなく、蛋白もしくはDNA等の合成を阻害して作用します。クラミジアの細胞壁はペプチドグリカンを持たないため、この部位に作用するペニシリンやセファロスポリンは無効です。投与期間は14日間が標準、比較的速やかに治癒に導くことができます。使用法に制限(8歳未満には原則投与しない)がありますが、ミノマイシンの効果は非常に良好と考えています。
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 ポイント:マイコプラズマ肺炎の臨床経過とほとんど区別がつかない。
     イムノカ-ドマイコが陰性の時に、検査すると陽性になることが少なくない。
     治療によく反応する。
   .  接触が密な家庭内もしくは幼稚園のクラス等小集団で流行がみられる。
     高齢者・基礎疾患を持っている場合は重症化することも。 
     
クラミジア感染症は原因によって3病型があります。普通、みられるのはChr.pneumoniae ですがそれぞれ整理して理解すると役に立ちます。
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クラミジア



百日咳

 最近、生後5ヶ月の典型的な百日咳とおとなの長引くしつこい咳、結果的に百日咳だった患者さんを2人も立て続けに治療しました。乳児の百日咳は無呼吸、けいれん・脳症、肺炎等重症化しやすく、またおとなの百日咳はなかなか診断にいたらず見逃され、長く咳に苦しんでしまいがちになります。いずれもそれぞれ問題を孕んでおり、こどもの百日咳、おとなの百日咳両方をともに診療する立場からこの厄介な感染症について解説します。
百日咳は百日咳菌、3種類ありますが主にBordetella pertusis の飛沫感染によって5~21日の潜伏期間の後、発症します。百日咳菌は線維状赤血球凝集素(FHA)などの働きで気管の線毛上皮に付着、増殖して産生された百日咳毒素(PT)が吸収され咳等の特徴的な症状が引き起こされます。ワクチン未接種の場合、典型的な百日咳の経過になります。くしゃみ、鼻水、咳などのかぜ様の症状が1~2週間程度続いた後(カタル期)、咳が頻回・連続的に出るようになり、続いた咳の終わりに特徴的な高音の息の吸い込みがみられ、最後に痰を吐いたりもしくは嘔吐して一連の発作が終了します(痙咳期)。表現するとコンコンコンヒュ-イ、コンコンコンヒュ-イ、ゲボゲボといった感じです。この間顔は真っ赤に紅潮、眼瞼はむくみっぽくなり(百日咳顔貌)、口唇は紫色になります。咳の発作は夜間がひどく、発作が無いときはまったく普通に見えます。発熱はほとんどみとめられません。6ヶ月未満の乳児では不眠・脱水・疲労等で入院が必要なことがあります。2ヶ月未満ですと無呼吸、肺炎、けいれんや脳症のため死亡することがあり油断ができません。この時期をうまく過ぎると、咳は発作的でなくなり回数も減少しますが咳自体はさらに数ヶ月続くことがあります(回復期)。
 検査では白血球数が異常に増加、少なくとも15,000以上、その中でリンパ球の割合が75%を越えてしまいます。
炎症反応CRPは高くなることはなく低値です。決め手は百日咳菌の培養同定ですが、開業の外来では困難で凝集反応やPTやFHAに対する抗体価の測定を施行します。凝集抗原には東浜株(ワクチン株)と山口株(流行株)が使用されます。山口株、凝集素価10倍以上を陽性としますが、陰性の場合でも感染を否定できないことがあります。実際、最近経験した5ヶ月の乳児では典型的な咳発作に加えて白血球が35,600 と著しく増加していましたが、凝集反応はともに陰性でした。 (新しい診断方法:下表)ptdiag.jpg
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 ワクチン既接種者(おとな)では様相が異なります。慢性の咳、いつになっても改善しない咳が平均で2ヶ月くらい続きます。咳は発作性に何回も続き、最後は吐きそうになることが多く、夜間には咳で目覚めて眠れなかったり息苦しくなったりすることが特徴です。実際に吐くことも少なくありません。咳が無いときは全くなんでもないようです。検査では白血球の異常はみられません。凝集素価は山口株が1280倍以上(もしくは山口株/東浜株>4)であれば百日咳と診断しますが、診断基準はいろいろのようです。当科での患者さんでは凝集素価は2560倍、1280倍等かなりの高値でした。
 予防は三種混合ワクチンです。こども達は生後3ヶ月より定期接種していることから、まだうけていない乳児、受けそびれた乳幼児学童が百日咳に罹患しやすくなりますが、外来の印象では抗体価の低下したおとなの方に罹患する人が多いようです。1度罹患してもあるいは予防接種を受けていても、感染防止に十分な抗体化の維持は永続しません。当科の外来でおとなの罹患者は年間3~5人程度で決して多い数ではありませんが、見逃されやすいので咳が遷延しているときには考慮が必要です。こどもの百日咳は数年に1人程度です。治療はマクロライド系(クラリシッド)の抗生物質の十分な服用、もしくはセフジトレン(メイアクト)の投与で治癒可能になります。2~3ヶ月の乳児では無呼吸等突然死のリスクがあることから入院加療が最善と考えています。


         ポイント: 典型的な乳幼児の百日咳はワクチンの効果でほとんどみられなくなっている。
              おとなの場合、抗体の低下のため実際には罹患者が少なくない。
              診断は従来の凝集反応よりPTIgG抗体価が精度から利用されるようになる。
              抗生物質(クラリシッド、メイアクト等)が有効。
[診断のチャ-ト]  

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[最新の診断基準案]
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インフルエンザ菌感染症

 名前にインフルエンザがついていますが、毎年流行するインフルエンザとは全く異なっていて、インフルエンザ菌はこどもの感染症で肺炎球菌と並んでもっとも知られている重要な細菌の一つです。由来は100年以上前にインフルエンザ様患者さんから、当時初めて検出されたとによります。乳幼児の髄膜炎・肺炎・中耳炎等の原因菌として有名です。細胞膜の構造から莢膜を有するもの(莢膜型)と無莢膜のもの(分類不能型:NTHi)に分類されます。
img718.jpg莢膜を有するものはさらにa~fの血清型に分かれ、b型が最も病原性が強いことが知られています。この血清型のインフルエンザ菌に対しては、ワクチンがアメリカで開発、実用化され日本でも導入されています。Haemophylus influenzae b が学名で略してHib、そのワクチンをヒブワクチンと呼ぶようになっています。莢膜型の感染は髄膜炎、肺炎、蜂窩織炎、化膿性関節炎、急性喉頭蓋炎、菌血症などの重症疾患をもたらします。多くは5才以下(なかでも2才以下)の罹患が多く、なんらかの防護機構の破綻により咽頭に付着している菌が血液に侵入することから発病します。無莢膜型は咽頭・鼻粘膜から直接伝播して副鼻腔炎、中耳炎、結膜炎などを引き起こしますが、莢膜型より軽症な臨床病型をとる一方、繰り返し罹患することが多く耐性菌の問題もあって治療等に苦労することがあります。
 インフルエンサ菌は健康なこどもの大部分(60~90%)に常在菌として棲息しています。強毒性のb型は2~5%保菌されています。感染様式は飛沫感染で飛沫を吸い込んだり、直接飛沫に触れることによって伝播します。莢膜型は血液に侵入すると髄膜や関節などの部位に付着して、無莢膜型は中耳、気管支などに直接侵入して発病、この時はかぜなどのウイルス感染が先行しているとより咽頭から伝播しやすくなります。
 重症型は乳幼児に多いので早期に診断して直ちに治療開始することが必要です。耐性菌が出現しているので適切な抗生物質を点滴静注することが、髄膜炎等を後遺症なく治癒に導くために重要です。中耳炎等の毒性の少ない無莢膜型のインフルエンザ菌に対しては、経口で抗生物質を使用しますが、この場合も耐性菌に対する配慮が必要になります。細菌性髄膜炎の約60%はインフルエンザ菌によります。その頻度は10万人に2~3人ですが、発病しますと10%程度の死亡率と30%を越える後遺症(硬膜水腫等)がみられ、乳幼児では最も怖い疾患の一つです。当院では開業21年、髄膜炎の患者さんを診ることがありませんでしたが、平成22年末から平成23年にかけて2人診断しました。いずれも後遺症なく治癒しています。img782.jpgimg860.jpg



    ポイント:インフルエンザ菌は乳幼児(特に2才以下)の細菌性髄膜炎の原因菌になっている。
        重症病型(髄膜炎、肺炎等)が疑われる時には抗生物質の点滴静注が望ましい。
        ヒブワクチンはb型インフルエンザ菌の罹患を防止するのに有効です。
莢膜


莢膜: 細菌の細胞壁の外側を覆っている多糖体でできた膜、この膜をもっていると白血球などの攻撃に抵抗して強い病原性をもつことになります。細菌の血清型はこの膜の抗原性をもとに分類されます。 無莢膜のインフルエンザ菌はこの多糖体をもたないため血清型を分類することができず分類不能型とされています。ワクチンはこの莢膜を抗原として作成されているので、無莢膜の分類不能型による感染阻止の効果は期待できません
 NTHi: non-typeable H influenzae ヒブワクチンに含まれていないNTHiあるいは非b型莢膜株が治療上問題になってきています。

肺炎球菌感染症

 肺炎球菌はこどもの上気道炎、中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、菌血症、髄膜炎などのおもな原因菌としてよく知られている細菌の代表格です。5才以下の乳幼児では鼻腔粘膜や咽頭などに発病することなく常在菌として棲息しています。幼稚園児の50%前後が保菌(成人では5~15%)している状態です。感染は免疫力の低下や気道の防御システムが破綻することによって成立します。肺炎球菌は膜の構造から大きく2つに(S型、R型)わかれ血清型は90にもおよびます。病原性があるのは莢膜をもつ(S型)タイプで、こどもの感染を引き起こす主なものはそのうちの13型が挙げられています。

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 肺炎球菌の重症な病型は菌血症、肺炎、細菌性髄膜炎です。3歳以下の急な高熱で白血球数増多(多くは15,000以上)があり、胸部レントゲン、尿所見に異常が見られない時は菌血症(高熱で感染源が不明)が考えられます。胸部に浸潤影がある時は肺炎と診断できます。細菌性髄膜炎の初期の判断はむずかしいのですが、高熱で意識状態(活動性、哺乳情況、表情など)が普段と異なっていれば、積極的に髄液検査を施行することによって早期発見が可能です。これら3病型は進行が早く、重症化しやすいため治療は有効な抗生物質を間髪をいれず点滴静注することが望ましいと考えています。より軽症な病型、咽頭炎、扁桃炎、中耳炎などの場合は抗生物質の経口投与で良いと判断していますがペニシリンに耐性の肺炎球菌が増加しているので抗生物質の選択には配慮が必要です。
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感染様式は飛沫感染です。 肺炎球菌を排除するには抗体・補体の助けが必要なため、抗体等の産生が悪い免疫の低下した状態では感染を受けやすくなります。また脾臓からの肺炎球菌の排除も一定の役割を果たしているため、脾臓の無いような場合や鎌状赤血球症のように脾臓の働きが機能していないような情況では感染しやすく、病状も悪化してしまいます。肺炎球菌に感染しているかどうかは尿中の肺炎球菌の迅速検査が簡便で参考になります。保菌者でも陽性になるのでその評価は臨床経過・検査デ-タから総合して決められることが大切です。
 現在、おとな用(23価ワクチン)ならびにこども用(13価ワクチン)の予防接種が利用できます。全血清型に効果を発揮するとはいえませんが、感染防御もしくは重症化の軽減に有効とされています。



   ポイント: 乳幼児の急な40゜Cの発熱では肺炎球菌感染を考える。
        乳幼児では、鼻腔粘膜や咽頭粘膜に保菌している(50%前後)。
        尿検査で肺炎球菌が陽性でも常在菌の場合があり原因の確定には注意が必要になる。
        高熱(39~40゜C↑)で白血球が15、000以上の場合は抗生物質の点滴静注が望ましい。

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