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インフルエンザ菌感染症

 名前にインフルエンザがついていますが、毎年流行するインフルエンザとは全く異なっていて、インフルエンザ菌はこどもの感染症で肺炎球菌と並んでもっとも知られている重要な細菌の一つです。由来は100年以上前にインフルエンザ様患者さんから、当時初めて検出されたとによります。乳幼児の髄膜炎・肺炎・中耳炎等の原因菌として有名です。細胞膜の構造から莢膜を有するもの(莢膜型)と無莢膜のもの(分類不能型:NTHi)に分類されます。
img718.jpg莢膜を有するものはさらにa~fの血清型に分かれ、b型が最も病原性が強いことが知られています。この血清型のインフルエンザ菌に対しては、ワクチンがアメリカで開発、実用化され日本でも導入されています。Haemophylus influenzae b が学名で略してHib、そのワクチンをヒブワクチンと呼ぶようになっています。莢膜型の感染は髄膜炎、肺炎、蜂窩織炎、化膿性関節炎、急性喉頭蓋炎、菌血症などの重症疾患をもたらします。多くは5才以下(なかでも2才以下)の罹患が多く、なんらかの防護機構の破綻により咽頭に付着している菌が血液に侵入することから発病します。無莢膜型は咽頭・鼻粘膜から直接伝播して副鼻腔炎、中耳炎、結膜炎などを引き起こしますが、莢膜型より軽症な臨床病型をとる一方、繰り返し罹患することが多く耐性菌の問題もあって治療等に苦労することがあります。
 インフルエンサ菌は健康なこどもの大部分(60~90%)に常在菌として棲息しています。強毒性のb型は2~5%保菌されています。感染様式は飛沫感染で飛沫を吸い込んだり、直接飛沫に触れることによって伝播します。莢膜型は血液に侵入すると髄膜や関節などの部位に付着して、無莢膜型は中耳、気管支などに直接侵入して発病、この時はかぜなどのウイルス感染が先行しているとより咽頭から伝播しやすくなります。
 重症型は乳幼児に多いので早期に診断して直ちに治療開始することが必要です。耐性菌が出現しているので適切な抗生物質を点滴静注することが、髄膜炎等を後遺症なく治癒に導くために重要です。中耳炎等の毒性の少ない無莢膜型のインフルエンザ菌に対しては、経口で抗生物質を使用しますが、この場合も耐性菌に対する配慮が必要になります。細菌性髄膜炎の約60%はインフルエンザ菌によります。その頻度は10万人に2~3人ですが、発病しますと10%程度の死亡率と30%を越える後遺症(硬膜水腫等)がみられ、乳幼児では最も怖い疾患の一つです。当院では開業21年、髄膜炎の患者さんを診ることがありませんでしたが、平成22年末から平成23年にかけて2人診断しました。いずれも後遺症なく治癒しています。img782.jpgimg860.jpg



    ポイント:インフルエンザ菌は乳幼児(特に2才以下)の細菌性髄膜炎の原因菌になっている。
        重症病型(髄膜炎、肺炎等)が疑われる時には抗生物質の点滴静注が望ましい。
        ヒブワクチンはb型インフルエンザ菌の罹患を防止するのに有効です。
莢膜


莢膜: 細菌の細胞壁の外側を覆っている多糖体でできた膜、この膜をもっていると白血球などの攻撃に抵抗して強い病原性をもつことになります。細菌の血清型はこの膜の抗原性をもとに分類されます。 無莢膜のインフルエンザ菌はこの多糖体をもたないため血清型を分類することができず分類不能型とされています。ワクチンはこの莢膜を抗原として作成されているので、無莢膜の分類不能型による感染阻止の効果は期待できません
 NTHi: non-typeable H influenzae ヒブワクチンに含まれていないNTHiあるいは非b型莢膜株が治療上問題になってきています。
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肺炎球菌感染症

 肺炎球菌はこどもの上気道炎、中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、菌血症、髄膜炎などのおもな原因菌としてよく知られている細菌の代表格です。5才以下の乳幼児では鼻腔粘膜や咽頭などに発病することなく常在菌として棲息しています。幼稚園児の50%前後が保菌(成人では5~15%)している状態です。感染は免疫力の低下や気道の防御システムが破綻することによって成立します。肺炎球菌は膜の構造から大きく2つに(S型、R型)わかれ血清型は90にもおよびます。病原性があるのは莢膜をもつ(S型)タイプで、こどもの感染を引き起こす主なものはそのうちの13型が挙げられています。

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 肺炎球菌の重症な病型は菌血症、肺炎、細菌性髄膜炎です。3歳以下の急な高熱で白血球数増多(多くは15,000以上)があり、胸部レントゲン、尿所見に異常が見られない時は菌血症(高熱で感染源が不明)が考えられます。胸部に浸潤影がある時は肺炎と診断できます。細菌性髄膜炎の初期の判断はむずかしいのですが、高熱で意識状態(活動性、哺乳情況、表情など)が普段と異なっていれば、積極的に髄液検査を施行することによって早期発見が可能です。これら3病型は進行が早く、重症化しやすいため治療は有効な抗生物質を間髪をいれず点滴静注することが望ましいと考えています。より軽症な病型、咽頭炎、扁桃炎、中耳炎などの場合は抗生物質の経口投与で良いと判断していますがペニシリンに耐性の肺炎球菌が増加しているので抗生物質の選択には配慮が必要です。
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感染様式は飛沫感染です。 肺炎球菌を排除するには抗体・補体の助けが必要なため、抗体等の産生が悪い免疫の低下した状態では感染を受けやすくなります。また脾臓からの肺炎球菌の排除も一定の役割を果たしているため、脾臓の無いような場合や鎌状赤血球症のように脾臓の働きが機能していないような情況では感染しやすく、病状も悪化してしまいます。肺炎球菌に感染しているかどうかは尿中の肺炎球菌の迅速検査が簡便で参考になります。保菌者でも陽性になるのでその評価は臨床経過・検査デ-タから総合して決められることが大切です。
 現在、おとな用(23価ワクチン)ならびにこども用(13価ワクチン)の予防接種が利用できます。全血清型に効果を発揮するとはいえませんが、感染防御もしくは重症化の軽減に有効とされています。



   ポイント: 乳幼児の急な40゜Cの発熱では肺炎球菌感染を考える。
        乳幼児では、鼻腔粘膜や咽頭粘膜に保菌している(50%前後)。
        尿検査で肺炎球菌が陽性でも常在菌の場合があり原因の確定には注意が必要になる。
        高熱(39~40゜C↑)で白血球が15、000以上の場合は抗生物質の点滴静注が望ましい。

RSウイルス感染症

 RSウイルスは聞きなれない名前ですが、迅速診断検査ができるようになり、その病態がよく知られるようになってくると10ヶ月前後の乳幼児にとって、突発性発疹と並ぶウイルス感染症のもう一方ということがわかってきました。1歳未満の発熱、細気管支炎、肺炎の主な原因になり注目されてきています。RSVbunrui2.jpg RSウイルスは2つに大きく分類されますがその中にも多様性があることが知られています。感染は多くは冬の期間にみられ毎年流行します。飛沫感染もしくは手を介して鼻や結膜の粘膜にウイルスが付着することによって感染し2~5日の潜伏期間の後発病します。1)上気道炎 2)喉頭気管支炎 3)細気管支炎 4)肺炎 の臨床経過をとりますが細気管支炎、肺炎は10~30%にみとめられ、重症化した1~2%程度が入院適応になります。乳児は母親からの受働免疫がなくなる6ヶ月頃から感染しやすくなり、感染するとほぼ100%に近く発病するため保育園等で流行することになります。2才までにほぼ全員が初感染します。その後の小児期では10~20%に再感染がありますが、症状の程度は初感染時より軽い経過で済みます。再感染した幼児が家庭内にウイルスを伝播することが感染の原因になっています。
 初感染の症状は発熱・多量の鼻水・咳です。さらに進展するものは、喘鳴・呼吸困難・頻呼吸など呼吸が苦しく顔色が悪くなって、哺乳や睡眠が難しい情況になります。この段階になると家族の看護・外来治療等では限界があり入院が必要になります。当院でも毎年2~3人が入院紹介になります。RSkeika.jpg
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 診断は年齢(5.6ヶ月から2才)、臨床症状(多量の透明な鼻水・発熱・進行して喘鳴)でこの疾患を疑い、鼻汁のウイルス迅速検査をすることによって20分位で確定します。呼吸状態が悪くないときは対症療法(家庭内・外来治療)で大部分は治癒しますが、発熱・喘鳴が強く、哺乳や睡眠が困難になっている時は細気管支炎・肺炎が進展している可能性が強く脱水の進行も考えられるため、入院による管理・治療が必要になります。
 RSウイルス感染した患児の30~50%に反復して喘鳴がみられ、喘息に移行してゆくことが少なくありません。未熟児や先天性疾患をもった場合は罹患すると死亡率が高いことが報告されており、あらかじめシナジスなどの坑ウイルス抗体で予防することが必要になります。
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    ポイント:RS感染症は10ヶ月前後の発熱・多量の鼻水が初発症状のことが多い。
        2才以上での感染は少なく、また感染しても軽症ですむ。
        喘鳴がひどく睡眠や哺乳ができないような時は入院適応になる。
        未熟児等免疫に問題がある場合、シナジスであらかじめ予防することになっている。 
高齢者も感染、COPDの増悪の原因になる。
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