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アレルギ-性鼻炎・結膜炎(花粉症)

 毎年、春先になると花粉の飛散が増えるにつれ鼻水・鼻づまり・くしゃみ・眼のかゆみ・目の周囲の皮膚のかゆみ等で多くのヒトを悩ませるわずらわしい疾患です。1960年代から目立つようになり1970年代から爆発的に増加、現在では約3人に1人が症状を持っているといわれています。スギ花粉の飛散量増加や排気ガス(ディ-ゼル粒子)・家屋の構造等(気密性・アセトアルデヒドetc)の問題、生活レベルが上がって感染症罹患の機会の減少から免疫メカニズムの変化がみとめられ、免疫を担当するTh2細胞優位の状態が多くなり、Th2細胞から放出されるサイトカインがアレルギ-疾患の発生・増加に関与している等が提唱され原因の一つとして推定されています。
 鼻のかゆみ・くしゃみ・とめることができずに垂れてしまう鼻水(水様性鼻漏)・鼻閉などの鼻症状と眼のかゆみ・眼瞼結膜の充血浮腫・目の周囲の皮膚さらには外耳道のかゆみなどの眼症状・皮膚症状がみとめられます。外に出たとき、あるいは外出から帰ったあと、洗濯物を取り込んだときなどに症状が発現もしくは悪化します。夜になると鼻づまりで呼吸が苦しくなったり、いびきがひどくなり時に咳き込み、翌朝には咽頭の痛みを感じることも少なくありません。アレルギ-性鼻炎にはダニやハウスダストが原因の通年性のものと、スギやヒノキなどの花粉が原因の季節性のものがあります。季節性のものとしてはスギ・ヒノキ・シラカンバ・小麦・カモガヤ・ブタクサなど約60種に及ぶ花粉があげられています。スギだけで発症する人、スギ・ヒノキがダメな人、小麦の穂に反応する人、どのような花粉・どのくらいの種類の花粉に反応するかは人によって異なります。花粉症は小・中学生から成人まで幅広い年齢層にわたってみられます。1回目の花粉体験ではアレルギ-反応はなく回数を重ねるにつれて、症状が出現、幼稚園児ではすでに珍しくなく当科の最小年齢は確認できたものでは2歳でした。
 診断は上記のような症状がみられれば、鼻汁好酸球検査・皮膚テスト(皮内テスト、プリックテスト、スクラッチテスト)または血清特異的IgE抗体検査・鼻粘膜誘発テストを実施し、そののち2つ以上で陽性ならば花粉症と確定できます。1つのみの陽性でも典型的な症状がありアレルギ-検査が中等度以上陽性なら花粉症として診断可能です。(下図:鼻汁好酸球)
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 花粉症の治療は①花粉抗原の除去あるいは回避②薬物療法(主力)③特異的免疫療法④手術療法に分けられます。
花粉が飛散しているときはまず吸い込まない努力が必要です。外出を控える、外出時はマスク等の防具、窓の開閉に配慮、洗濯物を室内に干す等です。部屋の掃除・除湿・ペットの飼育をやめることも重要です。服用可能な薬剤は数多く上梓されています。抗ヒスタミン剤、抗メディエ-タ遊離剤、ステロイド剤など症状に合わせて処方、また点眼薬・点鼻薬・軟膏も使用されています。薬物療法の主力は抗ヒスタミン剤です。種類が多く眠気等の副作用、効果の強弱、服用の回数と様々で患者さん自身によくあったものが良いと考えています。どの薬剤が最も適切かは患者さんによって異なり、処方してみないとわからないことがあります。当科ではアレロック、クラリチン、ザイザル、エバステル等をよく処方しています。また抗ロイコトルエン拮抗薬のシングレアなどは鼻閉の改善に有用でよく使用されています。ステロイド剤は通常では使用しませんが、症状が特に強くなり抗ヒスタミン剤等では不十分な時、もしくは症状が悪化するような状況(1日中屋外or花粉の飛散が甚だしい気象条件)では使用せざるを得ないことがあります。アレルゲンを皮下注射もしくは舌下する特異的免疫療法もありますが、治療期間に2~3年要するため、効果と時間の関係で限界があるようです。鼻粘膜の電気凝固やレ-ザ-手術などの治療もありますが、1回のみで完治というわけにはゆかず、どのような間隔で何回行うべきかは検討の余地があります。
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***鼻噴霧用ステロイド剤が初期から採用されている。




薬物療法についてはくしゃみ・はなみずがメインのタイプ、鼻づまりが強いタイプさらにはその程度(軽症・中等症・重症)に応じて薬剤が選択されることになります。いずれにせよ快適に日常が過ごせることがポイントですので、ご自分にあった治療を受けることが重要になります。

  ポイント:花粉等抗原にさらされると鼻みず・くしゃみ・目のかゆみ等が出現する。
       花粉等抗原を回避することが重要。
       自分にあった副作用の少ない適切な治療(薬剤の選択)が何より望まれる。

[参考]抗原抗体反応の概略
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[診断]
くしゃみ・鼻汁・鼻閉があり、鼻汁好酸球、皮膚テスト、血清特異的IgE抗体、誘発テストが陽性であれば診断は確実。

[診断の注意点]

・ 花粉症では季節外には鼻粘膜も正常で、鼻汁好酸球陰性である。
・皮膚テスト、血清特異的IgE抗体が陽性でも原因アレルゲンでない場合があり総合的に判断する。
・ 鼻汁好酸球検査、皮膚テスト(または血清特異的IgE抗体)、誘発テストのうち2つ以上陽性ならばアレルギー性鼻炎。
・花粉症の場合好発時期以外の診断では問診と皮膚テストまたは抗体の定量が特に重要である。
・ 皮膚テストと血清特異的IgE抗体検査の結果が一致しないこともある。
・ 鼻汁好酸球検査、皮膚テスト(または血清特異的IgE抗体)、誘発テストのうち1つのみ陽性がある。
・上記の場合典型的症状を示し、アレルギー検査が中等度以上陽性ならばアレルギー性鼻炎としてよい。
・鼻汁中の好酸球のみ陽性の時は他の鼻炎との鑑別が重要になる。
・典型的な有症者の約95%はアレルゲンの同定が可能である。
・ アレルギー性鼻炎と類似の症状を示すものに血管運動性鼻炎と好酸球増多性鼻炎がある。
・上記疾患では成人発症、非典型的症状、アレルギー検査陰性などが主な相違点。
・好酸球増多性鼻炎・血管運動性鼻炎でもアレルギー性鼻炎と同じく抗アレルギー薬が有効である。



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インフルエンザB感染症

 今年(2012)はインフルエンザA・Bともに流行しています。当科の外来ではB型が60%と多く、いつもの年とは異なって珍しい年になります。例年だとA型が流行し、後れてB型がちらほらと散見されるのが普通でした。A型とB型のウイルスの基本的な構造はほとんど同じですが、核蛋白(NP)の抗原性の違いにより分けられます。臨床症状も概ね同様ですが外来でみられるB型の特徴について整理してみます。001.jpg
 突然の発熱、球結膜の充血ではじまることが多いですが、発熱の程度や球結膜の変化がA型にくらべて軽く発症がゆっくりした印象があります。全身の倦怠感、関節痛、咽頭痛にはじまって悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状や筋肉痛(主に下腿、太腿)を呈するものも少なからずみられます。まれに心筋炎の合併があるので注意が必要です。有熱期間は1~7日間と幅があります。また2峰発熱といって2~3日して平熱になってから再度発熱する場合があります。A・Bともに遅れて咳が頑固になり気管支炎なかには肺炎になるものが1~3%にあり、熱や咳が遷延する例では配慮して下さい。当科でも今シ-ズンインフルエンザにともなって3例の肺炎(100人に1人程度)がありました。
 抗ウイルス剤(タミフル・イナビル等)の効果は、A型インフルエンザに比べてやや悪い印象をもっています。この理由は不明です。有効な場合、翌日には解熱する例がみられます。抗ウイルス剤には使用の制限、副作用の問題があり担当医と相談しながら服用の適否を選択することが良いと考えています。


  ポイント: インフルエンザA・Bの違いは核蛋白の抗原性の違いによる。
       臨床症状から鑑別することは難しいがB型はA型にくらべて重症感が少ない。
       初期より下腿の筋肉痛を訴えるものが少なくない。
       タミフル・イナビルの効果は限定的な印象。