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麻疹

  こどもさんを中心に診察している医師であれば、だれでもその病状について詳細に理解していなければならない感染症の代表格です。医学生時代の試験・国家試験にも必ず出題され、知識を深めることが要求されています。ワクチンの普及前は野生株による典型的な麻疹の流行がめずらしくありませんでしたが、最近ではワクチンを接種したひとが罹患する修飾された麻疹(典型麻疹より症状が軽く慣れないと診断がむずかしい)がみられることがあり、大学などで流行(2007年)して、その予防に過剰にみえるほど、配慮がなされるようになっています。野生株による麻疹は家庭内で看護する感染症としては最重症疾患のひとつでした。麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)の接種率が上がるにつれ典型的麻疹を経験することは少なくなっていますが、麻疹の概略を整理しておくことは大切なことと考えています。
 麻疹ウイルスは野生株・ワクチン株など含めて,A~Hのタイプに分類され22種類の遺伝子型が知られています。感染は主に飛沫もしくは接触感染で感染力はウイルス感染症の中で最も強く、20分間同じ部屋にいれば感染するとされています。流行を阻止するには対象者の95%以上のワクチン接種率と回数も2回受けることが必要とされています。潜伏期間は10~12日で、発熱(多くは38.5゜C以上)、咳、鼻水、結膜充血、眼脂などの上気道炎・結膜炎の症状が出現、カタル期もしくは前駆期と呼ばれています。高熱が3日続くと、口腔粘膜にコプリック斑(粘膜疹、周囲が赤く中央が白っぽくみえる)が現れ同時にいったん解熱、12~24時間後に再度発熱して全身に発疹が出現します(発疹)。発疹は耳介後部・顔面から始まって、体幹・四肢に広がってゆきます。発疹は最初小さな斑丘疹で、その後融合して斑状になり、汚い印象を受けます。コプリック斑は3日後、皮膚の発疹は4~5日で消褪しはじめ、二峰性の発熱が解熱するころには茶色く色素沈着を残してしだいに消失します(回復期)。以上が典型的に麻疹の経過ですが、過去にワクチン接種を済ませているかどうかで、状況が異なって来ます。1)修飾麻疹 :麻疹の生ワクチンを接種していたひとが野生株の麻疹にかかると軽症な経過になり、修飾麻疹と診断します。2)異型麻疹:1960年代の一時期に不活化の麻疹ワクチンを接種していた場合に罹患した麻疹です。これも症状は軽く典型的な経過・所見はとりません。3)副反応:これまで予防接種を受けていなかったひとが、予防接種後発熱・発疹等の麻疹罹患の経過をとる場合、予防接種の副反応と表現します。実際の麻疹よりは軽症で済みます。紛らわしいので注意してください。
  麻疹の代表的な合併症は中耳炎・肺炎・脳炎・角膜潰瘍などがあげられとくに中枢神経障害が問題になります。中耳炎は15%,肺炎は6%に合併すると報告されています。肺炎は①ウイルスそのものによるウイルス性肺炎②免疫状態の低下したひとにみられる巨細胞性肺炎③細菌の二次感染による細菌性肺炎の3つの病型があり、①②は治療が難しくなります。麻疹脳炎は0.1~0.2%にみとめられ次の3病型に分られます。①発疹出現後7~14日後に発症する急性散在性脳炎(ADEM)②発疹出現後1ヶ月頃に麻疹ウイルスが直接浸潤する麻疹封入体脳炎脳炎③発疹出現後8~10年後に麻疹ウイルスM蛋白が変異したウイルスが持続感染することにより発症する亜急性硬化性全脳炎。いずれも発症したケ-スでは予後不良です。
 このように麻疹は重症な疾患ですが、MRワクチン(麻疹・風疹混合)の接種率の向上により大きな流行はみられなくなり、典型的な麻疹を経験する医師も少なくなっているようです(つまり的確な診断が困難になっている)。最近の流行はワクチン接種しても免疫抗体ができなかったひと(PVF)や抗体が感染防御に十分な抗体価の上昇がなかったか抗体価が減少した場合(SVF)にみられようです(前述)。そのためMRワクチンの2回接種が必須になっています。非典型例や合併症をひととおり診断できれば、こどもの診療に従事可能な医師ということになります。

    ポイント:最近では典型的な麻疹は少なく、修飾麻疹や副反応による麻疹がみられる。
        合併症にADEM・SSPEなどの予後不良な疾患があるため、予防が重要になっている。
        みなれない医師だと診断ができないことがある。
麻疹経過

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