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いわゆる夏かぜ

 夏かぜには4種類あります。手足口病、ヘルプアンギ-ナ、咽頭結膜熱(プ-ル熱)、エコ-ウイルス等その他の発熱疾患などです。このうち咽頭結膜熱は突然の発熱、咽頭炎、目の充血を三主徴としています。原因はアデノウイルス3型(4,7,11)で5~7日の潜伏期を経て発病、結膜炎が見られない場合もあります(25%)。主要症状がそろえば診断は容易ですが、結膜炎がない場合はアデノウイルスの迅速検査キットが有効です。プ-ルでの感染が多いことからプ-ル熱ともよばれています。感染様式は飛沫もしくは飛沫核感染・糞口感染・接触感染ですが、プ-ルなど水が汚染されている場合は、ウイルスが粘膜から直接侵入するため大きな流行になることがあります。幼稚園児や学童に初夏から初秋にかけて発生しますが、流行の程度は年ごとにばらつきがあります。発熱は3~5日程度で高熱、7型アデノウイルスにては時に肺炎をおこすことがあります。多くは対症的な治療で治癒します。
次はヘルパンギ-ナです。これも夏かぜの定番です。ポイントは口腔内とくに口蓋垂の周辺に紅斑をともなった水泡→潰瘍・アフタができることです。多くは突然の発熱後1日位で出現します。原因はコクサッキ-ウイルス(A 2,4,6,8,10)、飛沫もしくは経口感染後2~4日で発病します。発熱(2~4日)、咽頭痛、よだれ過多、食べられない、頭痛などが主な症状ですが、脱水等重症化することは少なく、軽症の経過をとりますが、時に解熱せず無菌性髄膜炎を合併することがあります。すっぱいもの、しみるもの、味のつよいものはいずれも痛みを誘発しますので、注意が必要です。

 手足口病は手足に水泡、口腔内にアフタもしくは浅い潰瘍をみとめる疾患で乳幼児に多くみられます。毎年今の季節、夏場に流行のピ-クがあり、ごくありふれた感染症です。コクサッキ-A16ないしエンテロウイルス71が原因で飛沫・接触・糞口感染後4~6日の潜伏期をおいて発病、多くは軽症で経過しますが、中には無菌性髄膜炎、ギランバレ-症候群や心筋炎が合併することがあります。水疱を伴う皮疹が特徴ですが水痘にみられる中央のくぼみ(臍窩)はみとめず、丘疹様のものが四肢・臀部などに出現することもあります。手(手掌)・足(足底)の水泡は比較的平坦で表面は白っぽくみえます。手足口病の原因となるウイルスにはほかにもコクサッキ-A 5,6,7,9,10 コクサッキ-B 2,5 などがあげられ手足にみられる発疹の出現する範囲や形状が微妙に異なっていることがよくあるので注意が必要です。臀部にできる発疹は丘疹様で水泡形成することはありません。手足口病の原因ウイルスは年ごとに流行するものが異なっているので皮疹の様子も一様ではないことを記憶しておくことが診断の精度を高めることになります。
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 コクサッキ-ウイルスなどの夏かぜウイルスはエンテロウイルスに含まれます。エンテロウイルスの中にはポリオ(1-3型)、コクサッキ-A(1-22,24),コクサッキ-B(1-6), エコ-ウイルス(1-7,9,11-12,24-27,29-33)エンテロウイルス68-71 などたくさんの型があり感染しても症状がないもの(不顕性感染)や熱だけ(非特異的熱性疾患)の経過をとるものから、手足口病やヘルパンギ-ナ等(コクサッキ-A6・A2・A4・A10)特徴的な症状を呈するものまで種々あります。このグル-プはいずれも髄膜炎、脳炎、心筋炎等の重症な病態を来たすことがあるので油断はできません。とくにエンテロウイルス71の感染では中枢神経合併症の頻度が高いことが報告されています。
 アデノウイルスは聞きなれないかもしれませんが、こどものウイルス感染症のなかでも重要な位置を占めています。プ-ル熱・流行性結膜炎・肺炎・乳幼児下痢症・腸重積症・出血性膀胱炎などの原因としてあげられ、このウイルスを詳しく知っていることはこどもの診療において必須なことと考えています。アデノウイルスは当初、アデノイドから分離されたためこの名前がついています。A~F群に分類され50種類以上の血清型が存在しています。よく検出されるのは1~8型です。アデノウイルスは飛沫感染・糞口感染・接触感染で伝播、5~7日の潜伏期を経て発症します。病型には次のようなものがあります。adeno.jpg
 1)咽頭結膜熱は3型がもっとも多く4・7・11型も原因になります。発熱・咽頭炎・結膜炎が三主徴で、プ-ルでの感染が多いことからプ-ル熱ともよばれています。初夏から秋口にかけて流行します。。2)流行性結膜炎は8・19・37型が起因ウイルス、結膜充血・眼脂・眼掻痒感・羞明などが症状で、眼科で使用された器具からの感染も問題にされています。3)急性扁桃炎は特徴的な経過をとります。白色の滲出物(白苔)を伴う発赤した扁桃肥大をみとめ、高熱が3~7日間続き、咽頭痛・全身の倦怠感が強く重症、検査ではCRP(炎症反応)が高値・白血球増多をみとめあたかも細菌性化膿性扁桃腺炎の結果と同様になります。1年を通じて散見されます。細菌性扁桃腺炎では抗生物質が必須になりますが、アデノウイルスによる扁桃腺炎では抗生物質は無効ですので、どちらかを確定診断することはきわめて大切なポイントになります。4)肺炎はアデノウイルス3・7型で惹起されます。発熱や咳で発症しますが、呼吸障害が強く呼吸管理を必要とすることが少なくありません。5)乳児下痢症の糞便から5~9%程度がアデノウイルスが検出されます。血清型は41・42型です。重症な経過は少ないようです。6)腸重積症の患者や虫垂炎の患者からはアデノウイルスが検出され、その関与が示唆されています。7)出血性膀胱炎は突然の血尿・排尿障害・頻尿などて発症、肉眼的な血尿が普通で驚いてしまいますが、アデノウイルス11型との関連が指摘されています。8)急性熱性咽頭炎は熱がおもな症状で、咽頭は発赤、扁桃腺は軽度腫大に止まります。乳幼児に散発、アデノウイルスをチェックすることによって診断が可能です。アデノウイルス1・2・5型まれに3・6・7型が原因になっています。
 このようにアデノウイルスはこどもの様々な疾患の原因になっています。現在、アデノウイルスの迅速診断キットが利用可能なため、比較的速やかに診断することができます。ウイルス感染症と確定すれば、抗生物質を不必要に使用することがなく、経過観察もしくは対症療法にて対応することで治癒をまつことができるため、ウイルスを同定することが何より大切と考えています。

ポイント  ・ いわゆる夏かぜには4種類がある。
       ・ 手足口病、プ-ル熱、ヘルパンギ-ナなどは特徴的な皮疹や咽頭所見をみとめる。
       ・ 熱だけが主な症状でほかに目立った所見のない夏かぜに注意する。
       ・ いずれも対症的な治療になる。
        



 
        
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