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インフルエンザウイルス感染症(インフルエンザ)

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 毎年、主に寒い季節に流行して世間を騒がせる最も身近な感染症です。手洗い・マスク・ワクチン等の感染防御策を講じていても全人口の5~10%が罹患するとの報告がなされ、肺炎の併発による死亡率の増加や脳炎・脳症の合併症も深刻で大変な疾患です。ここではインフルエンザの概略について簡単に説明したいと考えています。ワクチン等の対策が有効とされているにもかかわらず、流行がなくならないのが、インフルエンザの最大の疑問で、その謎にも触れたいと思います。img113.jpg インフルエンザウイルスにはA,B,Cの3型があります。大流行を起こすのはA型とB型です。A型はその表面に2つの突起状構造物を持ち、1つはHA(赤血球凝集素)もう一方はNA(ノイラミニダ-ゼ)と呼ばれ、その違いからヒトに感染するものはHA3種類(H1,H2,H3)、NA2種類(N1,N2)が知られています。毎年のように流行するA香港型はH3N2,ソ連型はH1N1、過去に世界中に大流行したスペインかぜはH1N1, アジアかぜはH2N2です。鳥・豚・ウマまで保有範囲を広げると、HAは15種類、NAは9種類あります。強毒性で対策に力を入れている鳥インフルエンザにH5N1があります。インフルエンザウイルスは毎年少しずつHAとNAの抗原性が変化(抗原連続変異)していることが知られ、このことがワクチンの有効性に問題となっています。ワクチンの想定した型と違った型が流行した場合、効果はどうしても限定的になります。また何十年かに1度、ヒトのインフルエンザウイルスが鳥とのウイルスと遺伝子の交雑をおこして鳥由来の血清型が流行すること(抗原不連続変異)があります。この時はこれまで獲得した免疫やワクチンによる効果(予想できない型のためワクチンに含まれない)は期待できません。そのため大流行の危険性と強毒性のため死亡者が大勢になると想定され適切な防御対策が各国で大きな問題になっています。
インフルエンザウイルスは飛沫核感染(空気感染)によって大流行します。咳などの分泌物に接触したり、飛沫を吸い込んだりしての接触感染飛沫感染も少なくありません。したがって手洗いやマスク・うがいなどの行為も無駄というわけではなくある程度の意味があるようです。最も効果的な方法は学級閉鎖等のごとく感染者との接触をなくすことだと考えています。潜伏期間は24~48時間と短くこのことが短期間に流行する原因になります。ウイルスは咽頭から発病後3~5日、乳幼児では1週間以上たっても排出され続けます。
 症状は突然の発熱(多くは高熱)から、咽頭痛、関節痛、頭痛、筋肉関節痛、倦怠感などの全身症状がみられます。2~3日で解熱、その後引き続き呼吸器に感染が及んだ場合、咳などの症状が出現してきます。A型インフルエンザでは嘔吐・下痢の症状は少ないようです(B型では少なからずみられる)。病初期、発熱時に眼球結膜の充血がよくみられ診断の目安になります。高齢者や肺などに基礎疾患があるような場合は入院や死亡の原因になることがありますが、大部分は問題なく1~2週で完全に回復します。乳幼児が罹患すると高熱でぐったりした状態になることが多く、脳炎・脳症、肺炎などの合併(1~3歳児、発病後6時間以内に多い)も少なくないため病状の推移に細心の注意が必要になります。肺炎の合併は15歳以下では0.1%程度ですが高齢者、65歳以上では2%,80歳以上では13%と高齢なほど合併率が高くなります。infkoudou.jpg
脳炎・脳症の発生は10万人に1~2例ですので過度に心配する必要はありません。インフルエンザには異常行動(幻覚、幻視、悪夢、夜驚症等)が15%前後にみとめられ、当院でも突然数を1~100まで数えだし、帰宅するまでとまらなかった例(人間カウンタ-)がありました。高齢者の譫妄に似た病態と考えています。診断は各種のキットにて鼻からの拭い液で迅速に診断できます。陰性の場合、流行情況・症状からインフルエンザと考えられる見落としが10%程度あります。 infdrugs.jpg
治療はまず家庭内安静と水分・栄養の適切な補給等に努めてください。抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、イナビル等)が開発されある程度の効果が期待できます。服用する場合、早い段階(発病後24時間以内)で服用すると有効です。薬の副作用、異常行動との関連等注意すべき問題点がいくつかあります。その使用ならびに使用上の留意点については医師の指示に従ことになります。 ワクチンについては、上述したような理由で効果が一定しないことがあります。流行情報・ワクチン情報をもとに接種の適否を医師と相談しながら、被接種者・保護者が判断して受けてください。infdrugtemp.jpg


    ポイント:インフルエンザ感染症の大多数は家庭内安静・保温・水分補給等で改善する。
         診断は迅速検査によりが、確定後抗ウイルス剤の服用で症状の軽減が可能。
         合併症に肺炎・脳炎・脳症等があり、早期に対応することが重要。
         ワクチンの効果は必ずしも絶対ではない。
         2歳以下の乳幼児ではワクチンの効果はみとめられていない。


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