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エンテロウイルス感染症

 エンテロウイルスは腸管で増殖、のちに一部が血液に入って種々の臓器に運ばれ、再び各臓器で増殖して臨床症状が出現してきます。ごく普通に日常みとめられヒトの様々な疾患(表)の原因ウイルスになっています。表には入っいませんが、実際は不顕性感染(症状がない)で終わってしまう場合や、夏の原因のはっきりしない非特異的熱性疾患の多くがこのグル-プのウイルスによると考えられます。ヘルパンギ-ナ・手足口病・発疹性疾患・無菌性髄膜炎、急性出血性結膜炎などの特徴的な病態を呈し、まれに脳炎・脳症、ポリオ様麻痺性疾患、心筋炎・心膜炎、流行性筋痛症、肝炎などをきたすことがあります。enterov.jpg 
60種を超える血清型があり、ポリオ・エコ-・コクサッキ-・エンテロウイルスに分類されます。この中で手足口病・ヘルパンギ-ナ等夏流行する疾患の主要な原因ウイルスがコクサッキ-ウイルスです。名前の由来はニュ-ヨ-ク州コクサッキ-で分離同定されたことによります。ここでは夏かぜの原因としてよくみられるこのコクサッキ-ウイルスを中心に解説します コクサッキ-ウイルスにはA群・B群があります。マウスに対する病原性の違いからA・Bに分類されます。A群はA1~A22、A24の血清型、B群にはB1~B6の血清型が知られています。感染経路は糞口もしくは飛沫感染によります。潜伏期は短いもので1~3日、普通は3~6日で発症します。感染するとウイルスの排出は数週から8週にわたると考えられています。コクサッキ-A群の代表的な疾患は手足口病です。手(手掌、手背、指間)・足(足底、足背)・口(口腔粘膜、舌、口唇)に小水疱が出現、1日程度で破れてアフタ様になります。発熱はあっても軽度で、60%程度にみられます。コクサッキ-A16とエンテロウイルス71が原因のことが多いですがコクサッキ-A5・A10などでも発病します。通常軽症で治療は必要ありませんが、ときに髄膜炎、ポリオ様麻痺、ギランバレ-症候群を起こしたとの報告があります。
 ヘルパンギ-ナの特徴は突然の高熱から、咽頭の口蓋弓部に水疱・潰瘍を形成する点にあります。アフタ様の潰瘍は数個から多いと十数個に及ぶものもあり、咽頭痛・嚥下痛のため食欲低下や乳幼児では流涎の増加がみられ、時に水分・食事摂取の不良や高熱のため入院に至ることもあります。高熱の期間は普通2~4日、症状は5日~7日で軽快します。原因ウイルスはコクサッキ-A2~6、8、10などがあげられますが、B群でも発症します。高熱のためコクサッキ-A群感染では熱性けいれんを起こすことがよくあります。
心筋炎・心膜炎はコクサッキ-B1~5、A4,A14,A16さらにはエコ-ウイルスなどが原因として報告されていますが大部分はコクサッキ-B群で、コクサッキ-B群感染の約3%が心疾患を合併するようです。発熱にともなって倦怠感、息切れ、胸痛等で始まり心電図に変化がみられるようになります。重症化するものは少なく大部分が完全に回復します。
 無菌性髄膜炎は突然の悪寒・高熱・頭痛で発症、嘔気・嘔吐もよくみられます。原因の大部分はエコ-ウイルス、コクサッキ-A・B,エンテロ71などです。何年に1度か大流行することがありますが、後遺症を残すことなく予後は良好と考えられます。まれながら脳炎の発症もあるので注意が必要になります。
 急性出血性結膜炎はコクサッキ-A24、エンテロウイルス70が原因になります。目の痛み・羞明、ではじまり結膜の充血・結膜下出血、眼瞼浮腫、角膜表層のびまん性の混濁などかみられます。潜伏期間は約1日と短く、1~2週間で治癒します。。polio.jpg
 高熱から発疹を伴う臨床経過は幼少児ではよくみられます。エコ-ウイルの場合が多く3~5日の高熱後丘疹様の発疹が全身に散在、熱が高いので心配しますが自然治癒することが普通です。コクサッキ-A・B,エンンテロウイルスも同様に原因としてあげられます。
ポリオウイルスもエンテロウイルスに含まれます。予防接種の普及で医師としてポリオを実際にみることはこれまでありません。それほど予防接種が効果をあげた感染症の1つです。感染しても多くは症状がみとめられず治癒します。一部に脊髄の運動神経を障害して下肢の麻痺が出現します。昭和35年にポリオが大流行、10%前後の死亡がありましたが、緊急に生ワクチンを輸入して終息した経緯があります。現在ではその生ワクチンがむしろ感染源になる可能性があることが問題視され、予防接種でポリオの発症の危険性が否定できず、そうした副作用のない不活化ワクチンが導入され平成24年9月より使用されています。




   ポイント:名前は聞きなれないが、実際にはごく身近に経験しているウイルス。
        夏場に流行することが多い。 
        何らかの発疹を伴うことが少なくなく、ヘルパンギ-ナ・手足口病は見ただけで診断可能。
        時に流行する無菌性髄膜炎の原因になっている。 
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